はじめに
アレニウス式を用いた典型問題は、3パターンある。
とりあえず、この王道3パターンを押さえておけば安心かなと個人的に思う。
ただし、下に行くほど重要度は上がるかなと。
最も大切なのは、最下の「アレニウスプロット」である。
では、実際に各パターンごとに1問ずつ、合計3問を手を動かして解いてみよう。
なお、アレニウス式の概要をまとめた記事はこちらです。
パターン1.反応速度定数の比
これは最も基礎的な問題である。
「比」と言われているので、分母分子は問わないが、基本的には \( \displaystyle \frac{大きい}{小さい} \)である。
なお、アレニウス式中では、T[K]、E[J/mol]であることに注意する。
また、この問題のポイントは、活性化エネルギーと頻度因子が分母分子で相殺されるということである。
活性化エネルギーと頻度因子は反応そのものに依存するため、反応温度が変わろうが変化しない。
つまり、反応温度が100℃であろうが、110℃であろうが活性化エネルギーと頻度因子は一定であり、分母分子で約分できるのだ。
よって、求める反応速度定数の比: \( \displaystyle \frac{k_{110}}{k_{100}} \)は以下のように算出できる。
パターン2.反応速度定数の比と活性化エネルギーの相互関係
パターン3.アレニウスプロット
※有効数字は2桁であるため、四捨五入後の3桁を反映していく。
与えられたデータは、”T”と”k”が4つ。反応温度と反応速度定数である。
ちなみに、パターン.2の反応速度定数の比と活性化エネルギーの相互関係では、”T”と”k”が2つ。
「”T”と”k”が複数与えられたうえで、活性化エネルギーと頻度因子を算出する。」といった点では、パターン1と2は共通しているのだ。
実は、パターン2( ”T”と”k”が2つ )もアレニウスプロットとして、活性化エネルギーと頻度因子を算出できるのだ。
しかし、アレニウスプロットには労力を要するため、パターン2( ”T”と”k”が2つ )の場合は裏ワザといっていいか分からないが、「比」という便利な方法を利用した方が賢いであろう。
いずれにせよ、”T”と”k”が複数個与えられた本問は明らかに「アレニウスプロット」である。
「アレニウスプロット」といえば、以下の式である。
$$
\begin{align}
\displaystyle
\ln k = -\frac{E}{R}\frac{1}{T}+\ln k_0 ・・・①
\end {align}
$$
①式は傾き:\(-\displaystyle \frac{E}{R}\)・切片:\(\ln k_0 \)の直線としてみなせる。
よって、与えられたデータをもとに\( \ln k \ vs. \ \displaystyle \frac{1}{T} \)のプロットを行えばよい。
※プロットについての基礎知識であるが、「縦軸ー横軸」または「縦軸vs.横軸」と表現する。
プロットはExcel等の表計算ソフトで作成できる。
プロットの結果を以下に示す。
さて、アレニウスプロットをした結果、傾き:-30974、切片:31.174の直線であることが判明した。
よって、以下のように活性化エネルギーと頻度因子が求まる。
$$
\begin{align}
傾きについて \\
\displaystyle
-\frac{E}{R}&=-30974 \\
E&=30974 \times 8.314 \\
&=2.58 \times 10^5 \ J/mol \\
\\
\\
切片について \\
\ln k_0 &=31.174 \\
&=3.46 \times 10^{13} \ s^{-1}
\end {align}
$$
よって、求める活性化エネルギーと頻度因子は以下である。
$$
\begin{align}
E&=2.58 \times 10^5 \ J/mol \\
\ln k_0 &=3.46 \times 10^{13} \ s^{-1}
\end {align}
$$
コメント