実在気体の状態方程式シリーズは、【その1】から【その4】までの4記事、制作予定である。
まずは、【その1】van der Waalsの状態方程式を扱う。
van der Waalsの状態方程式
まずは、van der Waalsの状態方程式をご覧あれ。
$$
\displaystyle (P+\frac{a}{v^2})(v-b)=RT \\
\displaystyle P=\frac{RT}{v-b}-\frac{a}{v^2}
$$
※各文字の表す物理量と単位
\(
P:圧力\left[Pa\right]\\
v:モル体積\left[m^3/mol\right]\\
T:温度\left[K\right]\\
R:気体定数\left[J/(mol \enspace\enspace K)\right]=\left[Pa \enspace\enspace m^3/(mol \enspace\enspace K)\right]\\
a:van der Waals定数\left[Pa \enspace\enspace m^6/mol^2\right]\\
b:van der Waals定数\left[m^3/mol\right](=モル体積と同じ単位)
\)
なお、上下に2式並列しているが、どちらも全く持って同じ式であり、ただ変形をしただけである。
一見、複雑そうには見えるが、よく見ると理想気体の状態方程式の面影があるのが分かるだろうか。
本式は、理想気体の状態方程式をもとに、作成されたものだ。
具体的にはPとVに補正項を加えるという形で生まれた。
よって、理想気体の状態方程式:\(Pv=RT\)の面影があるのは当たり前である。
van der Waalsの状態方程式の導出
・・一旦、飛ばす・・
van der Waals定数(パラメーター)について
van der Waalsの状態方程式には、van der Waals定数(van der Waalsパラメーターともいう)という定数aとbがある。
van der Waals定数で抑えるのはたったの2つで良い。
まずは、van der Waals定数の持つ意味について。
果たしてそれぞれの定数はどのような意味を持つのか。
それぞれの単位に大きなヒントが隠されている。
では、簡潔に以下に述べる。
- 定数a:気体分子間の引力相互作用の強さ(分子間引力の補正項)
- 定数b:気体分子の大きさ・分子サイズ(分子の大きさの補正項)
次は、van der Waals定数と臨界定数との関係について。
臨界定数とは何ぞや!という気持ちがあるかもしれない。
そういう人は、まず以下の記事を見てほしい。
・・リンク・・
臨界定数とは、簡潔に言えば、臨界点における定数のことである。
臨界定数には具体的に、臨界温度・臨界圧力・臨界モル体積などがる。
なお、臨界定数は物質の固有値である。
では、ここから本題に入る。
方針はずばり・・・
van der Waalsの状態方程式(P=の方程式)について、(1回微分)=0・(2回微分)=0の2式を用意する!!
よって、まずは1階導関数・2階導関数を用意する。
$$
\displaystyle P=\frac{RT}{v-b}-\frac{a}{v^2}より\\
\displaystyle \frac{dP}{dv}=-\frac{RT}{(v-b)^2}+\frac{2a}{v^3}\\
\displaystyle \frac{d^2P}{dv^2}=\frac{2RT}{(v-b)^3}-\frac{6a}{v^4}\\
$$
ここで、詳細な説明は専門書に譲るが、様々な要因により、1階導関数・2階導関数の双方が0になる。
よって、以下のように2式①・②が爆誕する。
なお、1階導関数・2階導関数の双方が0になるときは臨界点であるため、そのことを添え字のcで表現した。
$$
\displaystyle \frac{dP}{dv}=\frac{d^2P}{dv^2}=0より\\
\displaystyle -\frac{RT_c}{(v_c-b)^2}+\frac{2a}{v_c^3}=0…①\\
\displaystyle \frac{2RT_c}{(v_c-b)^3}-\frac{6a}{v_c^4}=0…②\\
$$
あとは、都合のいいように2式をいじっていけばよいだけである。
$$
\displaystyle \frac{RT_c}{(v_c-b)^2}=\frac{2a}{v_c^3}…①\\
\displaystyle \frac{2RT_c}{(v_c-b)^3}=\frac{6a}{v_c^4}…②\\
$$
$$
①÷②より\\
\displaystyle \frac{v_c-b}{2}=\frac{v_c}{3}\\
\displaystyle v_c=3b\\
$$
$$
上で求めたv_c=3bを①に代入すると\\
\displaystyle T_c=\frac{2a(v_c-b)^2}{Rv_c^3}\\
=\frac{2a \enspace 4b^2}{R \enspace 27b^3}\\
=\frac{8a}{27bR}\\
$$
$$
最後に、van der Waalsの状態方程式に上で求めたT_cとv_cを代入する。\\
\displaystyle P_c=\frac{RT_c}{v_c-b}-\frac{a}{v_c^2}\\
=\frac{R}{2b}\enspace\frac{8a}{27bR}-\frac{a}{9b^2}\\
=\frac{4a}{27b^2}-\frac{a}{9b^2}\\
=\frac{a}{27b^2}\\
$$
以上をまとめると以下のようになる。
なお、臨界定数とvan der Waals定数はどちらとも物質に固有な値であるということだけ、再度述べておく。ともに物質依存値であるからこそ、関連付けられたのだ。
$$
\displaystyle P_c=\frac{a}{27b^2}\\
\displaystyle v_c=3b\\
T_c=\frac{8a}{27bR}\\
$$
まとめ
van der Waalsの状態方程式の導出方法とvan der Waals定数についてまとめた。
これで、van der Waalsの状態方程式の基礎は抑えたと思っても良いだろう。
さて、後は問題演習である。
実際にこの式をどう使うのか。
そこまで抑えられたら、文句なしであろう。
・・リンク・・
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